発達障害就労日誌

色々あるけどまぁ生きていこうじゃないかというブログです。

残念な新卒のための生存手引書(心構え編)

新卒ボーイ、元気にやってるか?

2月ですね。あと2ヶ月弱の猶予期間、2017卒の皆さん楽しくやってますか?「これが人生の最後の猶予期間だ」と思って、実際それが最後の猶予期間になる皆さんはとても幸福です。僕の周囲は永遠に続く猶予時間に捕まったまま身動きがとれなくなってます。

さて、そういうわけで新卒の皆さんが最低限職場で生き残るための手引きを書こうと思います。まぁ、書かなくてもわかると思いますが、この手引きは基本的に借金玉さんの失敗談から形成されています。地雷を思い切り踏んだ結果、見事に下半身が吹っ飛んだ経験から生まれた文章です。

言うまでもなく借金玉さんは残念な人ですので、「優秀な俺にこんな負け犬の話など必要ない、俺は俺の力で社会をサヴァイブしていく」というならそれはそれで正しいと思います。そういう方はブラウザの戻るボタンを押していただければと思います。大丈夫、君が力尽きた時おじさんはそっとそばにいる。おじさん、若者にはなるべく幸せになって欲しいと思ってるけど、優秀さに自信がある若者が社会にタコ殴りにされるのもそれはそれで楽しめるんだ。

そういうわけで、「これまでの人生大体だめだったのに新卒で就職していきなりうまくいくわけない気がする」とお考えの皆さんのために、僕はこの文章を書いています。残念なことですが、皆さんのその判断は妥当だと思います。学校生活が上手く運ばなかった皆さんがいきなり新卒で上手くいくかといえば、その可能性は正直なところあまり高くないと言わざるを得ない。

そんな時、なんとか生き残るための手引きがこの文章になります。もっと正確に言えば、職場にブチ殺されるまでの時間を可能な限り長く稼いで、その間になんとか適応を果たす、というのが目標になります。

尚、一番最初に言っておきますが、死ぬくらいなら逃げろ。

 

若者らしく、失敗を恐れるな、前のめれ

などの美しい言葉が、学業生活を終えて社会に船出する皆さんにたっぷり投与されると思います。これらは全て罠です。

とても大事なことだから改行してもう一度言います。これらは全て罠です。

正確に言えば、新卒の段階から能力で周囲をチギれるくらいつよい人に関してはその通りの可能性もあります。また、「そもそも教育環境がない」「新人には使い古しのAKを一丁与えて前線投入」「新卒は3年で8割死ぬ前提で採用する」などの素晴らしい人材育成環境を持つタイプの企業に関してもその通りの可能性もあります。(これはそのうち書きますが、こういう企業が意外に発達障害者に向いていることもあります。また、こういう企業の経営者が発達障害者ということもよくあります。ちなみに借金玉さんも現在この手の企業に在籍していますが、新卒の時に就職したホワイト企業代表格みたいな組織より遥かに楽に適応出来ました)

しかし、まぁごく普通のあるいは普通以上の人材育成環境と規模を持つ企業の場合は、とりあえず生き残る秘訣は「若者らしくなく」「失敗を恐れ」「常に一歩引く」ことです。

皆さんはこれから就職すると、おそらく外注された極めて意識の高い人材教育会社の社員などに「やっていく気持ち」をモリモリ植えつけられると思います。研修は基本的にそういう風に出来ています。「俺がこの会社を変えるんだ」「やってやるぜ」「どんどん前に出よう」などの気持ちが無限発生すると思います。最高の同期と厳しくも楽しい時間を過ごし、皆さんはこれ以上なく浮かれポンチな状態で実戦投入されることになるでしょう。胸元に忍ばせた名刺もなんとも誇らしいことでしょう。気合を入れたスーツも買っちゃったりしてね。

もちろん、定型発達した優秀な皆さんはそれでもいいと思います。しかし、我々発達障害勢はこのマインドで職場に出ると、死にます。定型発達してても、同期の皆さんと比較して能力が劣る勢も死にます。死にます。

 

部族なんです。

syakkin-dama.hatenablog.com

こないだ、↑のエントリでも書きましたが、会社や組織というのは一種の部族です。トライブです。そこにはそれぞれの文化があり、風習があります。その文化の中には素晴らしく効率的なものもあれば、実に独創的なものもあります。人類は素晴らしいですね。言うまでもなく、その逆は1000億倍くらい存在します。大抵の場合、組織を支えているのは非効率的で凡庸な手法です。

誰も意味を理解しないまま風習として定着した業務、全くの非効率でありながらも定型業務として確立している手順。そういうものが山ほどあります。外資コンサルとかそういう業種に行った皆さんについてはわかりませんが、少なくとも日本の大企業の現場はそういうもので満ちています。具体的に言えば、エクセルを電卓で検算するなどの謎の風習はあって当たり前です。

皆さんがやるべきことは、部族の中に溶け込んでその一員になることです。いいですか、この目標を絶対に取り違えてはいけない。新卒の皆さんに、業務を効率化する必要も最適化する必要も一切ありません。皆さんがやるべきことは、とにかく部族に仲間と認めてもらうことです。いいですか。話はそれからです。部族に一員と認めてもらう儀式が非合理的で理不尽で意味不明なのは当たり前だと思ってください。

「空気を読む」という概念があります。借金玉さんADHDにASD併発説もあるくらい、それが苦手です。ここを読んでいる皆さんもおそらくそうでしょう。これはそういう話です。「これもしかしてヤバくね?」と感じた時には大抵手遅れです。ですから、皆さんは最初に腹を括っておいてください。皆さんがこれから飛び込む先は、謎の部族です。皆さんの1年目のお仕事は、部族の構成員と認められることです。

 尚、これは続編の方でもじっくり書きますが、会社に一度定着した風習を正しい手順に効率化するというのは、経営者がやってもクッソ大変です。10人いないような会社でも本当に苦労します。(苦労しました)そして、これは一番重要な概念ですが、現場は「業務の効率化」なんてものを求めてはいないのです。現場の人間にとって最も重要なのは、今日と変わらない明日がやってきて変わらない(もしくは少し上昇した)給与が与えられることです。業務工程を変更するなんていう面倒な作業は絶対にやりたくないのです。ましてや、業務が効率化されたために自分が安穏とこなしている仕事が取り上げられるなんて事態になるのは最悪としか言いようがないのです。現場の人間が求めているのは、1日ちょっと頑張ったくらいの出力でちょうど終わる量の仕事なんです。

皆さんは基本的に残念な皆さんだと思いますが、妙なところで優秀さを発揮する悪い癖があるかもしれません。具体的に言うと、「この1時間かけてる工程、アレをアレしてアレすれば15分に短縮できね?」とか「このエビデンス保存する作業完全に無駄じゃね?わざわざ表紙つけてパンチ穴あけて紐で括ってるけどアホじゃね?」とかそういうことを言いたくなると思います。

絶対にやめろ。

新卒の時というのは脳がまだ組織に染まっていないので、業務の粗が大変よく見えます。(尚、業務の粗が良く見える能力と、業務遂行能力の間には何の関係もありません)色々不満があるのもわかります。また、我々発達障害者は「これくだらなくね?」と脳が認識した瞬間、インプットが一切不可能になるという最悪の性向を持っています。興味のないものが一切脳に入っていかないアレです。

この状態に突入するリスクを可能な限り減らすために、職場に飛び込む前にこう心に誓ってください。「文化とは相対的なものであり、絶対的な尺度はない。そして自分は異部族の一員になって賃金を貰うのだ」と。(合理性とか効率性とか収益性とかそういう教義は捨ててください。そういうのは経営者になればゲロを吐くまで考えられるので、新卒の時にまで考えなくてもいいです)

いいですか、皆さんはアフリカの部族が謎の風習を持っているのをテレビで見かけても、「世界には様々な文化があるなぁ、すごいなぁ」と考えることが出来ると思います。「蛮族だなぁ」と思ったとしても口には出さないと思います。同じことです。牛糞で壁を塗れと言われたら喜んで塗ってください。AKBを踊れと言われたらノリノリで踊ってください。間違っても宣教師のような振る舞いはしないでください。首にタイヤハメられて着火されたくはねえだろ?

肝に銘じてください。組織で脈々と受け継がれる謎の風習は、宗教営為の一種です。他人の祈りの作法にケチをつけてしまったら、それも立場の弱い人間がそんなことをしてしまったら、ブチ殺される以外の結果はあり得ません。言うなれば、文化人類学者がフィールドワークをするような気持ちを持つべきだということです。そして、文化人類学者が部族に溶け込んで学ぶ必死さを出してください。(本心から部族に適応してしまうのも素晴らしいことです。可能ならそうしてください。皆さんはたぶん無理だと思いますが)

あいつは色々足りないけど、頑張ってる。

皆さんが1年目で獲得すべき評価はこれです。これが取れたら合格点だと思って貰って構いません。大丈夫です。1年目の終わりには、5~10%くらいの同期が「カス」という焼印を額にジュッとやられてますので、この評価を取ってればアウトにはなりません。多分、一人くらいは大ポカやらかして「ペケがつく」などの概念も発生していると思います。皆さんが新卒時にやるべきことは、この位階まで落下することをなんとしても避けることです。上位90%にくらいつくことです。欲を言えば、上位50%に入れるといいですね。上位20%狙いはやめましょう。無茶な目標を掲げて無理に走ると確実にコケます

「好感を持たれていようがいまいが結果が出なきゃ切られるだろ」とお考えの皆さん。その通りです。しかし、「努力してる様子がはっきり観測出来る好感の持てる新卒」と「努力している様子がまるで見られないクソムカつく新卒」のどっちが先にブチ殺されるかといえば、当然後者になります。この戦略の基本は時間稼ぎです。とにかく時間を稼げば多少は発達するでしょうし、仕事も習得出来る可能性が上がります。

「仕事の習得」というのはテキストと睨み合って脳に情報をインプットする作業とは全く別物です。というのも、現場の日常業務というのは「誰かに教えてもらう」もしくは「見て盗む」などの習得方法が必須になるからです。この場合、業務習得の最高の潤滑油は「好意」です。業務を教える立場の人間に好意さえ持たれていれば、ハードルは一気に低くなります。もちろん逆も然りです。わかりますね?悪意を持たれた時点でアウトなんです。

組織において「新卒が育たなかった」ということでペナルティを受ける人間はもちろんいます。あなたの上司の役席級などです。しかし、「新卒なんて別に育たなくていいし、なんなら潰れて欲しい。別に私の給料には何の関係もないし」と考えている人間もいます。おう、具体的に言うと一般職な。いいか、あれ本当に怖いからな。絶対に舐めてかかるなよ。実家帰った後はお土産忘れんなよ。センスのいいやつな。あいつら群れると役席級でも群れで狩り殺すからな。

おおまかな戦略性は見えて来ましたね?では、戦術に入っていきましょう。

 

敬意を全身で表現しろ、本気で演じれば本心になる

大抵の皆さんは、企業に入った場合まずは現場に放り込まれると思います。そして、大抵の皆さんは「俺は将来的には経営層に行きたい」と考えていると思います。その考えをまず綺麗さっぱり捨ててください。少なくとも捨てたことにしてください。

 現場で生き残れなかった人間が経営層に上がれるわけがないんです。その考えは現場をナメることに直結します。ここまで現場を散々悪し様に罵ってきましたが、現場なくして企業が回らないこともまた事実です。そして、多くの場合経営陣の考え方と現場の考え方は完全に乖離しています。つまり、皆さんが採用面接から入社おめでとう期間に遭遇した役員から部長クラスの人間から賜った金言は、一切役に立たないということです。これは大企業に限らず、小さな会社でも大体そうです。宿命です。この世は地獄です。

 現場の全ての人間に徹底的に敬意を払ってください。いいですか、皆さんが仮に大卒総合職で入社していたりなどすると、どうしても「ナメる」感情が発生しかねない属性の人類が社内には存在すると思います。絶対にナメないでください。どうしても人間をナメたいなら、経営陣の方をナメてください。皆さんは現場の人間たちから仕事を盗み取って、当たり前にこなして次のステップに行かなければならないのです。「現場のことをクソもわかってねえくせにふんぞり返ってんじゃねえよ」という感情を経営陣に対して持つくらいの勢いで構いません。本心ではなくとも、そのように演じてください。大丈夫です。新卒が経営陣と話す機会なんて入社おめでとう期間を過ぎれば滅多にないですから。「経営陣まで出世することに憧れる無能」を想像してください。絶対そうなりたくはないだろ?現場大好き、ずっとここにいたい。現場最高。実務大好き。そういうアピールをしてください。

職場の人間と接する時はとにかく下手に出てください。少なくとも、部署の人間相関図が見通せるまでは絶対に本心を出さず、「皆さんを尊敬しています」に徹してください。隙があれば、周囲の人間に対する敬意を言葉にするように心がけてください。キレのある反論、一撃で人間をやり込める発言などはツイッターでやってください。皆さんが異常にそういうことが得意なのはよくわかります。僕もそうです。とにかくやめましょう。絶対にやめましょう。

ただし、新入りがくるとものすごい勢いで接近してきて異常な親切さ(と迂遠さ)で仕事を教えたがる人間には注意が必要です。最初はしっかりと敬意を表明しつつ職場の人間相関図を良く観察してください。かなりの確率で「仕事を干されていてやることのない人」です。こういう人は「そもそも大して仕事をしていない」というアビリティを持っているので、業務習得のロールモデルには一切なりません。ベンチャー企業や強烈な競争に身を投じている営業系の皆さんなどには想像がつきにくいかもしれませんが、大企業にはこういう人が必ず存在します。

話がそれました。これはとても重要な話ですが、業務を指導する人間にとって教えた人間が結果を出すかなんてことには大した意味は通常ありません。重要なのは、教えた人間が教えた通りの手順で仕事をこなしているかです。仕事を任された空気が出てくるまでは、絶対に業務をアレンジしたり効率化したりしようとしないでください。死にます。いいですか、とにかく「言われた通りやる」をまずは実行してください。

人間は敬意ある態度を演じていると、次第に本心と演技が入り混じって区別がつかなくなる便利な機能を搭載しています。フルに活用してください。大丈夫です。皆さんの本質である反骨心は必要な時になればいつでも呼び戻せます。人間を背中からぶっ刺すことは出来なくなりません。ちゃんと必要な時には出来ます。とにかく、最初は演じてください。次第に楽になります。

人間を褒めるスキル、人間を称えるスキルは最高のコスパを持っています。本当に優秀な人間を褒めるのなんてのは簡単ですし、そんなことは誰でも出来ますので、皆さんは犬でも猿でも電信柱でも褒め上げるスキルを習得してください

 

心構えは出来たか?じゃあ声に出そう。

人間、心構えだけしても中々声には出しにくいものです。そういうわけで、入社する前にこれらの言葉がツルっと口から滑り出すように訓練しておくのは大変良いことです。

リピートアフターミー!

「承知しました!」

「勉強させていただいてます!」

「流石ですね!」

「お疲れ様でございます!」

「ありがとうございます!」

スルっと口に出せましたか?意外と難しいんですよこれ。実際やろうと思うとタイミングを外したりもわりとします。とにかく、じっくり話しこんで賞賛するのはわりと難しいスキルなので、まずは大きな声でハッキリとこれらの言葉を口に出すことから始めてください。大丈夫です、人間は最初は警戒してもある程度心を許すとおだてに乗っかりたい気持ちが勝ちます。人間は皆褒められるのが大好きです。まずは警戒心を解いてください。心のATフィールドが解ければ、クソみたいなおべっかもスルスルと人間の心に入っていきます。人間の警戒心を解くには、日々の地道な積み上げが重要です。「あいつはデカい声で立ち上がって挨拶するなぁ」くらいの印象を積み上げれば、わりと人間はオチます。落としましょう。

 

以上、心構え編でした

読了ありがとうございました。まずは気持ちをガッチリと作り上げるための心構え編となりましたが、次回は実際の業務状況に即したTIPS編のエントリを上げようと思います。次も読んでいただければ大変幸いです。

次はクソ理不尽なガン詰めに遭遇した場合の対処方とか、飲み会の凌ぎ方とか、メモの取り方、クソ野郎から仕事を教えて貰う方法などを書きたいと思います。

よろしくお願いします。

 

あと、最後に本当に念を押しておきますが、命より大事な仕事はありません。「死のうかな」みたいな発想が出てきたらその時点で逃げてください。いいですか、逃げるという選択肢は常にあります。むしろそれは勤め人の特権です。活用せずに死ぬのは本当にやめましょう。