発達障害就労日誌

色々あるけどまぁ生きていこうじゃないかというブログです。

もうだめな新卒のためのエントリ

もうだめだ、の声が届いております

僕のツイッターのDMの方に「就職しましたが、だめです」の声が大量に届いておりまして、急遽予定を変更してこのエントリを書いております。それが呼び水になったのか、更に2つ「もうだめだ」DMが届いており、なるほど社会は相変わらず厳しいようですね。。返信しているうちに夜が明けてしまいました。

通常「もうだめだ」の発生は四月頭のこの時期ではなく、五月のGW明けなどに集中するのですが、流石は日ごろから僕のツイッターを眺めている皆さん。潜在的に「もしかしたら危ないか?」という危惧はあったのか、判断がとても早い。そういうわけで、まず一番大事なことを書きます。

その「もうだめだ」という判断はとても立派です。

発達障害は言い訳病」みたいな話が結構ありますが、僕の知る限りではそれはあまり多いケースではなく、発達障害によくあるケースは「認められない」、即ち「否認」の状態です。明らかに問題が出ているのに、その問題を直視できない。「努力不足」とか「意思が弱い」とかそういう楽な回答に逃げ込んだ結果、欝などの二次障害でぶっ壊れ、本物の「もうだめだ」がやってきます。

かくいう僕もそうでした。「これはもうだめだ」と気づいたのは入社して半年以上経ってからで、その時点では欝も不眠も相当に悪化しておりました。今思うと、さっさと精神科に通ってコンサータや安定剤、あるいは睡眠薬をもらえば少なくとも「居眠り」などの致命的な問題は解決できていた可能性があるし、もう少し長く組織で生き残りを図れた可能性もあったと思います。

何故そんなことが起こるのか、ちょっと考えていきましょう。

 

精神疾患や障害、あるいは精神医療をバカにしていた

僕に「もうだめだ」という相談をしてくる皆さんの多くがこの話をします。この数日で実に8通の「もうだめだ」DMが届いているのですが、そのうち半数にニュアンスの違いはあれど、この内容がありました。自分が発達障害のケがある可能性には気づいていたが、その一方でそれを治療したり向き合ったりすることにとても大きな抵抗があった。それは、自分がそういったものを見下し、バカにする意識があったからだ、と。

つまり、懺悔なんですね。

でも、例えば精神疾患発達障害を公然と嘲っていたとかならともかく、内心にそういうものがあったというのは結構仕方がないことだと思います。僕は物心ついたときから精神を病んでいたのでこういう感情は持ったことがありませんが、実際多くの人がそんなものでしょう。それは、本当に仕方のないことです。

それともう一つ。これは「追い詰められた人間が異常に謙虚になる」の現象でもあるでしょう。要するに、自責の感情が高まるあまりに「自分にはこんな悪いところがあった、だから罰を受けているのだ」というような合理化が始まってしまっているのです。

でも、それで何かが良くなるか?と言われたら絶対にそんなことはありません。とりあえず、障害や疾病を馬鹿にする気持ちはなくなった。それはよいことです。そして何より、その感情を乗り越えて「もうだめだ」と認めたこと。

僕は「良く頑張った」と思います。問題と向き合うことなしに問題の解決はありません。そして、「目の前に大きな問題がある」と認めるのはとても辛いことです。特に、解決方法がほとんど明らかになっていない発達障害に関しては。

しかし、皆さんは認めたんです。じゃあ、ここからは「解決」に向かうフェイズですよね。最初の山は越えました。本当に良く頑張りました。あなたを責めるのはあなたの会社の人がやってくれるので、あなたは自分を責める必要はありません。まずは、「認めた」という自分を褒めてあげてください。

あなたはもう十分苦しみました、その苦しみをこの短期間で「認めた」のはとても立派なことです。まずは、これを大事にしてください。自責で何かがよくなることなんて、絶対にありません。

 

パニックを抜け出そう

さて、僕に「もうだめだ」の相談をしてくださった皆さんは全員、少なからずパニック状態でした。相談がしたいのか懺悔がしたいのか、辛い状況への共感が欲しいのか現実的な対処方を知りたいのかを区別できている人は一人もいなかったと思います。ある意味当然のことかもしれません。

しかし、「もうだめだ」を抜け出すには現実的な行動をする必要がある。そして、これはADHDに顕著ですが、問題が起こると様々な考えが頭の中で渦を巻き、現実的なタスクに落とし込むことが不可能になります。

これは「見えていない」状態です。目の前の巨大な問題に圧倒され、自分がとるべき行動を定められないまま空転しているだけです。しかし、同じ場所をクルクル回りながら自分を責め立てても、一つも良いことはないわけですね。

しかし、新卒の皆さんにやるべきタスクが多いかというと、実を言えばそんなことはないわけです。大体のところはこんなものでしょう。

1.発達障害の診断を受けて投薬治療を試す

2.職場への順応を模索する

3.業務上の現実的困難を一つずつ解決していく

優先順位も多分このままですよね。そして、もう一つ。パニック状態にある人がとりあえず落ち着くには安定剤という強力な手助けがあります。「会社のトイレからこのDMを送ってます、涙が止まりません」という状態には、一粒の安定剤が最も強い効果を持ちます。また、二次障害が出始めている人も早急に対処する必要があります。

欝と不眠。この二大疾病は本当に恐ろしいです。人が死ぬ病です。

そういうわけで、まずは通院を始める。その後に会社への順応や困難の解決を図っていく。そういう順番になるということをまず心得てください。

 

病院の予約が取れない、休みが取れない、タスクの見通し

相談の中で困りごととして一番多かったのがこちらです。確かに、メンタルクリニックは大体が大盛況。初診の予約を取るのは結構難しい。この解決策は片っ端から電話をかけて問い合わせるしかありません。しかし、大体の人が1つか2つ電話をした段階で「予約が取れない」というパニックに陥っていました。

また、新卒で入社したばかりということで「有給を取る」という発想が完全に無い方も多く、「この状況を解決しなければ自分は助からない」というようなところまで追い込まれている方も散見されました。

確かにメンタルクリニックの予約は取りにくい。大人の発達障害に対応してくれる病院も多くはない。しかし、現実問題として発達障害者が治療を受けやすい状況を作るというのは、それよりはるかに難しいことです。新しい環境への適応に失敗し「もうだめだ」の状態にある人に、それは荷が重過ぎる。今考えるべきことではありません。

「予約が取れるまで電話をかけまくる」、「有給を使うことも視野に入れる」。この二つだけでOKです。というか、それ以外は考えなくてよいです。社会問題の解決は余裕ができてから考えればいいのです。もちろん、新人が「休みをくれ」とは言いにくいでしょう。でも、現実を言えば「新人」であるうちが一番休みやすいのです。なにせ、戦力になっていないのですから職場にいなくても困る人は少ない。上手な言い訳を考えて、休んでしまいましょう。

とりあえず、予約を取ってしまいましょう。あまり推奨される手段ではないですが、予約日が遠いならとりあえず抑えておいて、もっと近い日取りで予約が取れる病院があれば、遠い方はキャンセルしても良いのです。

発達障害の投薬治療の場合、これは半ばやけっぱちの言い回しですが「名医」を探す必要はほとんどありません。何せ、大人に適用になる治療薬がコンサータストラテラの2種類しかないのです。不眠に関しても、睡眠薬の種類なんてたかが知れています。鬱も、軽度の「鬱状態」ならまずは「安定剤を飲んで落ち着く」だけで大分効果が出ます。とにかく予約の取れた病院に飛び込みましょう。めんどくさいことは何も考えなくていいのです。

 

職場への順応のために

「仕事が全く出来ない」という声が聞こえてきます。特にこれは事務職の方に多いですね。かつての僕と全く同じ状態です。さて、これは一朝一夕で解決する問題ではありません。ADHDが複雑な書類処理のような仕事を迅速にこなせるようになるまでは、かなり長い訓練が要ります。

じゃあ、どうするか。「出来ないモンは出来ないんだからしょうがない、努力はするが一定は仕方ない」というポジティブな諦めを持つことです。この諦めがあると「すいません、少しずつでも頑張っていきますので何卒ご容赦ください」のような言い回しが出てくるようになります。

そして、この時期に「仕事が出来ない」と気づいた皆さんはとても有能です。何故なら、「仕事が出来ない」なりの立ち回りにシフトすることが可能だからです。「俺は出来るはずだ」「周囲がおかしい」と敵意を燃やすような状態が最悪です。もちろん、敵意はあっていいのですが、それを表に出してしまうと生き残りを図るべき持ち時間がどんどん減ります。

まずは、「足りないながらも一生懸命頑張りますので、どうぞよろしくお願いします」という姿勢を見せることだけを考えておけば良いのです。「あいつはちょっと抜けてるけど、素直だし頑張ってる」と認識されていれば、最短でも1年は生き残れるでしょう。この「素直に頑張っている」という外面を作るには「自分は仕事が出来ない」という認識がどうしても必要になります。

何度も書きますが、これを認めるのは本当に苦痛なことです。「努力が足りないんだ」「意志力が足りないんだ」に逃げる方がずっと楽です。しかし、皆さんは認めた。何度でも言います。本当によく頑張った。

そして、「仕事はやれるだけやって、それでもダメならしょうがない」と自分を許してあげてください。究極的に、あなたを追い詰めて殺すのはあなた自身です。逆に言えば、あなたが自分の敵にならなければ、あなたは生き残ることが出来ます。

最後まであなたの味方であり得るのはあなた自身だけです。どうか、最後まで自分の味方であってください。

 

リラックスタイムこそ最も重要

皆さんは新卒なので、「早速日付が変わるまで残業」というのはレアケースだと思います。大体のところ、20時くらいには帰宅しているのではないでしょうか。しかし、「もうだめだ」状態にある皆さんは、帰宅したあと「自分の時間」を過ごすことがまったく出来なくなっていると思います。「明日も仕事だ」という強迫観念に取り付かれている状態では精神も肉体も全く休まっていません。

そこで、僕の友人のお話をします。彼は公務員で、仕事があまり出来ません。診断は受けていませんが発達障害の気はかなりあります。そして、「俺は職場のお荷物、公務員最高」と公言して生きています。しかし、彼がこの「悟り」に到達したのはわりと最近のことで、それまでは「俺はだめな人間だ」「もうだめだ」をずっと繰り返していました。

では、この「悟り」の根源となったのはなんだったのか。「カウチポテト」と彼は言っていました。「カウチポテト」というのはソファーに寝そべったままダラダラテレビを見て時間を過ごす人のことを言いますが、彼の「カウチポテト」はもっと気合いが入っています。

彼はボーナスを注ぎこんで自室にホームシアターを構築しました。すわり心地の良いソファも買いました。完全な暗室に出来るように遮光カーテンも購入し、ちょっと良い葉巻とヒュミドールも購入しました。ちょっと良いお酒とグラス。そして、美味しいツマミも揃えました。

彼はボロボロになって帰宅すると、そこに飛び込み徹底的に自分の世界に浸るのです。これは、一種の「外界遮断シェルター」みたいなものでしょう。また、シェルターに入る前には必ずシャワーを浴びるそうです。一種の儀式なんでしょうね。彼は部屋がどれだけ荒れ果てようとも、このシェルターだけは常に清潔を維持しているそうです。

最近は「部署異動があって、ちょっと仕事が出来るようになってきた」と言っていました。これは「休息」の重要さを示すとても大きな教訓だと思います。精神的に追い詰められると、家で休息をとることすら出来なくなるのです。そこで、外形的に「休息」を整え、強制的なリラックス状態を作れる場所を確保することが重要になります。もちろん、僕も導入しているハックです。

心身がボロボロのときに家で「努力」したって結果は出ません。強い意志を持って休むことがむしろ大事なのです。「強い意志」でダメなら、「ここは自分のリラックススペース」という場所を作ることです。椅子1個でも、これは結構成立します。

焦燥感に焼かれながら無意味にスマホをいじったりして過ごすあの時間、実は休息になっていません。「休む」には意思とセッティングが必要です。新人の皆さんに一番大事なのは、まずは「休息」だと僕は思っています。

部屋の兼ね合いなどで出来ることは限られるでしょうが、「休む」環境を作り、効率的に心身を回復させること、意識的にやってみてください。そして「もうだめだ」の原因が、実はあなたではなく周囲の環境ということもあり得ます。その場合、状況に変化が訪れるまでダメージを最小に抑えて耐え切るのがベストの判断ということも、当然ありえるのです。

 

仕事における困りごとの解決

さて、これは結構長期目標です。「仕事が出来るようになる」というのは、自分なりのライフハックを生み出していくということで、それなりに時間も手間もかかります。しかし、第一にやるべきことは「問題点の定義」です。

例えば、「書類にケアレスミスがどうしても発生する」とか「タスクをどうしても放置してしまう」のであれば、まずは一点に問題を絞りその解決策を何通りも試していくことが大事でしょう。何もかもを一発で解決する魔法の解法はありません。「まずはこの問題に取り組む」という姿勢が大事です。そして何より「問題の定義」が大切です。

ご相談のDMを見る限り、皆さんは様々な問題がグチャグチャに絡まりあい、そこに自責の念や現状への不満なども乗っかって、完全に問題が絡み合ったスパゲティになっています。まずはこれをほどいてやるしかありません。

そのために何が必要か。「時間」と「休息」です。厳しいときほど休みは必要なのです。そして、「時間」は先述した「あいつは抜けてるけど素直だし頑張ってる」という評価を受け取ることで効率的に伸ばすことが出来ます。 

その問題のスパゲティコード山盛りを一発で解決するのは不可能です。一つ一つ、ほどいては繋ぎ、整えていくしかありません。「これ以上ぐちゃぐちゃにしない」がまずは大事です。問題を定義し、一つずつ解決していく。これだけは大事にしてください。

我々はタスクが3つも重なると何も見えなくなってしまう人です。だから、まずは一つずつなのです。そして、入社10日くらいのこの状況で「問題の定義」など正確に出来るわけがありません。まずは心身のダメージを最小限に押さえ、生き残りを図るべきでしょう。

 

大丈夫、皆さんは優秀です

何度でも何度でも言います。この早いタイミングで「もうだめだ」という判断が出来た皆さんは、とても優秀です。事態は「否認」のフェイズを抜け「解決を模索する」に入りました。一歩前に進んでいるのです。泣きながら会社のトイレでphaさんの文章を読んでいた思い出が僕にもあります。皆さんの気持ちは痛いほどわかります。

しかし、僕が半年以上かけて認めたことを皆さんは10日で越えたのです。良く頑張りました。本当に良く頑張ったと思います。大したものなのです。

これから「解決」のフェイズは長く続くでしょう。辛いこともあるでしょう。でも、少しずつ発達していきましょう。そういうわけで、新社会人の皆さん。人生の新しい門出、おめでとうございます。

ともにこの時代を生き抜いていきましょう。

やっていきましょう。