発達障害就労日誌

色々あるけどまぁ生きていこうじゃないかというブログです。

初めての商売の話

 レモネード・アントレプレナーシップ

僕なんですが、尾羽打ち枯らしたとはいえ今でも一商人ではあるつもりなんですよね。売るものが酒であれメシであれ不動産であれ文章であれ、一介の銭ゲバ商人であるというマーチャントスピリットは忘れたくないわけですよ。そういう言葉があるのかどうかは知りませんが。

そういうわけで、僕にも「生まれて初めての商売」に関する心温まるエピソードがあります。ほら、あるじゃないですか。アメリカのイカした起業家が夏休みにレモネード売ったとかそういうの。僕にもあるんですよそういう思い出が。僕の原点となるエピソードだなぁと思ったので書くことにします。アントレプレナーシップのお話ですね。よろしくお願いします。今日のは本当にいい話です。自信があります。

 

バタフライナイフ

はい、僕が人生で初めて商った商材はこちらになります。というのものですね、昔ですね、粗暴なチルドレンがバタフライナイフにゾッコンだった時期があったんですよ。バタフライナイフってのは、なんか刃がかっこよく収納できるナイフなんですが。かっこよくクルクル回すとカッコいいなどの特徴があります。(詳しい形状とかはググってください)確か、キムタクが出たドラマかなんかで流行ったんじゃなかったと思います。少なくともウィキペディアにはそんなことが書かれてました。当時からほとんどテレビは見ない子だったのであんまり知らないんですが、そんな感じ。(チーマーブームやカラーギャングなどの概念も関係してるかもしれない)で、粗暴なチルドレンが教師を刺す事件が起きたんですね。そりゃそうだ、頭の悪いチルドレンにナイフ持たせたらどうなるかなんてわかりきってる。「キレる17歳」とかなんかそういう言葉もありましたね。懐かしい。少年犯罪がめっちゃ流行ってました。

そういうわけで、「規制するぞ」みたいなあれが発生した時期があったんですよ。僕が中学1年生のときですね。で、そういう話が出てくると当然のことですが、チルドレンの「ナイフめっちゃ欲しい」という気持ちはマックスになります。クラスでもバタイフライナイフを持ってる奴は「スゲー」という空気感になり、バタフライナイフを入手できなかったチルドレンは技術室から盗んだカッターナイフを携帯してクルクル回すなどしていました。みんなめちゃくちゃ欲しがってたんです。僕はそういう中学校の出身です。若い方にはイメージできないかもしれませんが、トイレでナイフ持ったチルドレンが決闘している中学校というものも存在したのです。存在しない方がベストだったんですが。

そういうわけで、僕は特にナイフに興味はなかったのですが、ある日街をブラブラしてると、粗暴なチルドレンが喜ぶ曖昧なアイテム(手錠とかスタンガンとかエアガンとか)を売るタイプの玩具屋の軒先に、大量のバタフライナイフがダンボールに詰められて置かれているのを発見しまして。(ただし、刃つけはされていないものでした。ペーパーナイフの類ですね。でも、そこそこは切れた。あと、頑張ると刃をつけることもできた)どういう経緯なのかはよくわかんないんですが、一本1000円で投売りされてたんですよ。たぶん社会からの風当たりが強くなってきたので在庫処分したかったんでしょうね、主要客層は中高生でしょうしPTA等に怒られたんでしょう。30本入りで3万円。見た瞬間に思いましたね。「コイツは儲かる」と。当時、バタフライナイフはそこそこ売られていましたが、刃なしの安物でも3000円くらいはした記憶があり、1000円はかなりお買い得感がありました。

で、何も考えずにお店に駆け込んだわけです。財布の中には1000円程度しかなかったですが、とりあえず店主に話しかけてみました。うん、中身もそんなに悪いものじゃない。ちゃんとクルクル出来そうだし重みもある。そのナイフ全部まとめて欲しいニャー、まとめて買うと安くならないかニャー。

その結果、このような結論がアウトプットされました。

  • 中学生にはこれは売れない、社会から怒られる。俺はモラルがあるんだ。
  • ところでおまえ兄貴とかいる?
  • 一箱まとめて全部なら25000円だな、いやおまえに売るんじゃないぞ
  • アンダスタン?
  • 承知しました

そういうわけで、やっていく気持ちが発生したわけです。

 

資金を調達しましょう

はい。良い商品が見つかったら次にやることは資金調達です。流石に中学1年生がポンと2万5千円は出せない。そういうわけで、当時時々出入りしていた喫茶店に出向いて、曖昧なおっさんたちに相談してみることにしました。昔は体制と戦うのがライフワークだったタイプの曖昧なおじさんが経営するお店で、やはり昔は体制と戦うのがライフワークだったタイプの曖昧なおじさんたちがいつもたむろしており、背伸びしたがる中学生に大変寛容なお店だったのです。(一応、制服で来るなというルールはあった)。友達はいないし家にも居場所がなかったので貴重な逃げ込み寺でした。僕はこまっしゃくれたクソガキとして、曖昧なおじさん方には可愛がられていたんですよ。

「バタフライナイフめっちゃ安く売ってるのみつけたんですよ、学校では皆欲しがってるからまとめて仕入れて売りたい」

という話をしてみたわけですね。出資を募ったわけです。結果としては、曖昧なおじさん達の反体制スピリットに火がつきまして。「学校でナイフを売るという発想が良い」「武器の調達だな?」「そもそもナイフを規制しようというのが気に食わん」などのお褒めの言葉をいただき、「よっしゃ、3人で一人5000円ずつ出資してやる、金は儲かったら返してくれてもいいし、なんなら返さなくてもいい。ただし、俺たちから金を得たことは誰にも話すな。あと、その後どうなったか必ず報告に来い」という結論になったわけです。あと1万円は家中かき集めたらギリギリ届きました。お年玉の残りなどもあった気がする。

ナイフを実際に買う買い付け人ですが、中学を卒業した後曖昧にブラブラしてる先輩に「ナイフ一本あげるから買うの頼んでいい?」って言ったら「いいよ」という話になり、これもあっさり解決しました。曖昧な先輩は曖昧なのでいつもその辺にいましたし、誰もかまってくれないので後輩に時々遊んでもらうなどしていました。その先輩は現在も地元で曖昧にブラブラしているという情報が先日耳に入りましたが、特に感想はありません。変わりゆく世界にも変わらないものがあるんですね。

 

おっかない人たちと話をつけましょう

ナイフですが、すぐに同学年の連中に6本くらい売れました。値付けは2000円です。仕入れ値は一本862円ですのでなかなかの利益率と言えるでしょう。何せ、店に出向いても中学生じゃ買えませんからね。有害玩具とかそういう概念がありました。たかがペーパーナイフに大仰な話だと思いますがね。

みんなあれをパチンパチン振り回したかったんですよ。掛け売りもアリでしたので、商品はそれなりに売れはしました。ただ、友達が少なかったので想定よりも遅いペースではありました。2000円も中1にはちょっと高かったですね…。そして、マーケットは我が故郷のヘル中学校ですのでわりと早い段階で「呼び出し」という概念が発生します。はい、商売にはつきもののあれですね。「ショバ代」とか「シマ」とかそういう概念です。

「おい、俺のシマでなにやってんだコラ、誰が許可した?」のようなことを言いに3年生数人がやってきました。誰かにチクられたんでしょうね。ヤンキーの皆さんです。僕は昭和の最後の方の生まれなので流石に「番長」などの概念に遭遇したことはありませんが、やはりサル山なので序列があります。

これは結構やばく、最悪袋叩きに合った上商品を全部強奪される可能性もあります。やってることがあまりコンプライアンスを遵守しているとは言えないので泣きつく先もない。自力で乗り切るしかない状況です。ぶっちゃけこれが発生する前に売り切るつもりだったんですが、友達の少なさとヤンキーの異常な動きの早さ(社会性昆虫並み)が仇になり、間に合いませんでした。あいつらフェロモンとか出して集まるし、異常に嗅覚が働くのホント意味わかんない。知能はちょっと賢いチンチラくらいしかないくせに。

そこでショバ代交渉が始まったわけです。しかし僕も、学校に全てのナイフを持参するほどのアホではありません。

「今手持ちのナイフは1本しかないですし、この場でフクロにしても奪い取れるのはナイフ1本だけですよ。それより一緒に商売しませんか」

という話です。

「今は2000円で売ってるけど、先輩のご自由に値付けしてもらって構いません。仕入れ値は1500円なので、1本売れるごとに1500円はください。1500円以下に値段を下げるなら売るの自体をやめます。絶対に下げません。商品の先渡しはしません。客を連れてくるか金を持って来てください。条件は絶対譲りません。先輩、僕は先輩に敬意を持ってますよ、先輩の顔で儲けてくださいよ。サンプル1本渡しますね、このお代も売れたらください。その代わり、1年生に売るのは見逃してください、2年3年には売りません。」

というお話でした。結果的にはこれが当たった。流石ヤンキーネットワークですね、翌日の放課後には大変上機嫌に満額を持ったヤンキーヘッドがやってきて、商品をドサっと渡すと「おう、ありがとうな、まだ買いたい奴はいるぞもっと仕入れて来い、20本くらいくれ。あとなんかあったら俺に言えよ?」などの言葉を残して去っていきました。23本お買い上げです。

いや、これは本当に良かったですね。チマチマ自分で売るより手間もないしリスクもない、売値については上手いことハッタリをキメられたので利鞘は確保出来た。なによりデカいのはヤンキーヘッドが後ろ盾についたことです。しばらくはヤンキーヘッドに媚びて商品を供給する従順な後輩であればいい。

たぶん、エグい値段で売ったんでしょうね。まぁ、商品としても人気がありましたから、顔の広いタイプのヤンキーなら労なく売りさばくだろうとは思ってました。古くは「パー券」とかその辺に近い概念ですね。政治家とかもよく売るらしいですね、よく知らないですけど。幸運だったのは「損得勘定は出来る」タイプのヤンキーが仕切ってたことです。「ただひたすらに粗暴」みたいなのが仕切ってたらこの時点で話は終わっていたでしょう。また、「仕入れルートを奪って自分で商売する」ところまでは頭の回らないタイプだったのも幸運でした。

 

収支計算をしましょう

はい、ここまでの収支を計算しましょう。仕入れにかかったコストは2万5千円です。売り上げは2000円で販売したのが6本、1500円で販売したのが23本です。合計46500円也。イヤッハァァァァ!差し引き21500円の儲けだぜェェ!

という世界観になりました。このときの嬉しさは未だに覚えていて、仕入れて売って儲けるというのは本当に快感だということがよくわかりましたね。あの快感をまた味わいたくて商売をしているフシはあります。本当に嬉しかった。

いやー、とてもよかった。儲かった。さぁ、次の仕入れだ。

 

ハイパー欲掻きタイム

はい。まぁ、あれですよ。そこに需要があるなら売らなきゃダメじゃないですか。ね、お客さんが待ってるんですよ、僕の商品を。わかるでしょ。だって販売ルートも出来て、あとは仕入れさえすれば買ってもらえるんですよ。しかも手元に資金もある。そんなのやるしかないじゃないですか。皆が待ってるんです。期待に応えなきゃいけない。もっとお金欲しい。もっとお金欲しい。もっとお金欲しい。大丈夫もう一回くらいイケる。よっしゃいこう。(引き際という重要な概念はあります)

そういうわけでですね、再び曖昧な玩具店の店主と交渉しまして、今度は2万円分仕入れたわけです。もちろん、曖昧な店主が処分したかった各種安物ナイフやそれっぽいもののバルク売りです。バタフライナイフは半分くらいで、あとはちゃちなナイフとか、メリケンサックとか、なんか握って殴るとイタい凶悪なツボ押しみたいなのも混じってた気がします。大丈夫だ、バタフライナイフじゃなくても多分イケる。あいつらの販路は強い。たまごっちのパチモノみたいな雰囲気で売れる気がする。ギャオっちとかあったし。よし、これを箱で持って行ってヤンキーヘッドに渡して3万円貰う。話はそこで終わりだ。よっしゃ行くぞ、と思ってたらナイフの買い付け代行をしてくれた先輩に「おまえ儲けてるだろ」と言われて5000円奪われました。

流石にこれくらいの時期になると、「なんかやばい気はする」という感覚はあった気がします。これ売ったら終わりと心に決めてました。まぁ、1年分以上のお小遣いが4~5日で稼げたんだからヨシとしようじゃないかと。上級生のヤンキーズにも上手く取り入れたし。当時の僕のお小遣いは月2000円でした。それでコーヒー代や本代などを賄っていたわけです。友達はいなかったので交際費はあまりかかっていませんでしたが…。

しかし、この時期はヤンキーヘッドを抑えて販路を確保したことですっかり危機感が薄れていました。ヤンキーヘッドに「金になるあれを持って来る1年坊」という肩書きを与えられたおかげで、学校内でのカーストも上昇したような気になっていました。同学年の不良ぶってる連中などにアヤをつけられても、ヤンキーヘッドを呼べばいいだけですし。教師にチクられる心配もまずない。僕の商売をつぶすということは、ヤンキーヘッドの商売を潰すということです。そんなアホはこのサル山には存在しない。順風満帆です。

 

ハイパー怒られタイム

刃傷沙汰が発生しました。はい、僕の売った商品で人間が刺されるという事態が起こったわけです。起きる気がするなー、とは思ってましたが、我が母校の平均IQの低さをナメてました。まさかそんなすぐ起こるとは思わなかった。ペーパーナイフなんですけどね…まぁ尖ってますしね…。結構流血したそうです。僕はそのような事態が三年生のフロアで起きているとはつゆしらず、ナイフやらなんやらのゴッチャリ入ったカバンを部室に隠し、大変愉快な気分で授業を受けていました。教科書は全て机に突っ込んであるので、カバンがなくても特に不都合はなかったです。

あれは確か国語の授業だったと思います。突然授業が止まり、数人の教師が教室に雪崩れ込んで来て持ち物検査が始まりました。僕はナイフを持って授業を受けるほどアホではないのでそこでは捕まりませんでしたが、バカ数名がナイフ没収になりました。やばいやばい、こいつらはバカだし意思も弱いので僕が売ったということは必ず露見する、とりあえずバックレだ、とにかく学校から逃げ出そう…と思ってたらですね、そのまま数人がかりで職員室に連行されましてね…。

あれはすごかったね、職員室に投げ込まれるまでほとんど地面に足がついてなかった。いやー、とっくの昔に僕が売ってるの割れてたんですね。教師舐めてましたね、本当に速かった。別室ではヤンキーヘッドと愉快な仲間たちもガン詰めされてたらしいですね。つーかあのクソども、一端の不良を気取ってる癖に教師に仕入れ元ゲロったの本当に死ねばいいと思う。そこはダメだろ常識で考えろよ。

こっから先はあんまり楽しい思い出じゃないんですけど、いやまぁね…。話は「はっちゃけて怒られました」で閉じないですよね…。はい。あんまり詳細に書くとあれなんですが、ハイパーメガウルトラアルティメット怒られタイムに突入し、財布に入っていた儲けも隠しておいた商品も全て没収され、耳から緑色の汁が出るくらいグチャミソに怒られました。はい。社会がマジギレするとこういうことになるのか…という感じがしましたね。社会は本当に怖い。せめて現金をまとめて持ち歩かなければ利益は持ち逃げできたし、商品も学校に持ち込んでさえいなければ後から少しずつ換金できたんでしょうけどね…。ヤンキーヘッド抑えて完全に調子に乗ってましたね…。隠し場所も安直過ぎましたね。あっという間に発見されてしまった。

最初は「違法性はない」「自分の金で買った商品を売ることに何の文句をつけられる筋合いがある」「刃がついてない、つまりナイフではない。ペーパーナイフは文房具だ、文房具を売って何が悪い」「俺の商品を奪う権利があんたらにあるのか、それは所有権の侵害だ」などと論陣を張ってみたりもしたんですけど…まぁね…。はい。本当にすいませんでした。はい。親とか出てくる話になるんでこの辺でいいっすかね…。

まぁ、あれですね。地回りのヤクザを抑えて調子に乗ってたら警察に怒られたみたいなあれですかね…。あ、僕はとても真面目で誠実なチャイルドだったので、出資者と仕入れ元は最後まで口を割りませんでした。これは自分を褒めてあげたいです。すいません、反省してます。

 

いい話ですよね

いや、本当になんというかですね、この話本当に「商売」という感じするじゃないですか。社会に怒られるところまでワンセットで。世の中の人間がハシャいで怒られが発生するまでの流れって大体こんなんじゃないですか。

でもほら、あれですよ。この話ですけど、僕の何が悪いって、本質的に悪いこと何一つしてないじゃないですか。少なくとも法にはだいたい触れてない。刃はついてないわけですし。(正直に言うと、バタフライナイフ型の時点で、おまわりさんがその気になれば軽犯罪法で取り締まられる気はする。バタフライ型のペーパーナイフを所持する正当な理由は難しそう)

商材を見つけ、出資を募り、仕入れ、おっかない人たちを抑えて販路を作る。めっちゃ頑張ってるじゃないですか。需要をガッチリ認識してるのもエラくないですか?しかも、社会的なアレで供給が乏しくなった商品をピンポイントで仕入れてるんですよ。しかも需要は増えて供給は絞られてるのに仕入れ値は下がってる商品ですよ。これしかない!って感じしませんか。

まぁ実を言うとエラくは特にないと思うんですけど、「これは売れる」という感覚は間違ってないですよね。将来的に僕がめっちゃお金持ちになったときに逸話として語られてもいいと思いませんか。将来的にめっちゃ金持ちになる目があるかはともかくとして。すごい頑張ってると思いませんか。アントレプレナーシップと呼べませんか。呼べませんか。確かにそんな気はしてた。ごめん、調子に乗った。尚、出資してくれた曖昧なおっさんたちに事の顛末を説明しにいき、「一ヶ月1000円ずつ返すから許してください」という話をしたら、大爆笑の末なんか褒められました。それから頑張って少しずつ返そうとしましたが、受け取ってもらえませんでした。これはいい話では。微妙なところか?

今でもたまにバタフライナイフという概念を見かけると、この思い出を思い出します。懐かしいですね。良い経験を子供の頃に出来た、大変微笑ましい思い出であり引き際という重要な概念を教えてくれた経験だった…と思っていたのですが、その後30歳を目前にしてやはり引き際を誤って爆死し、現在はブログを書いているという話でした。ご清聴ありがとうございます。次は上手いことやります。次こそは。

ちょっと毛色の違う話で発達障害関係なく恐縮ですが、今後もやっていきましょう。