雑記 総体性と一問一答、先日のエントリの具体化。
ブログに具体性がないという話
がコメント欄にお叱りとして投下され、うーん…と悩みこんでいたのですが。
ところで皆さん、AをBにする、DをEにする、GをHにする、という断片的なお仕事が振られたとします。僕はこういう「全体像の見えない断片的なタスク」を記憶するのが極めて苦手です。「A~Hの工程を行います、あなたの受け持ちはA-B、D-E、G-Hです」という教え方が大変望ましいわけですね。(まぁ、現実問題としてそういう風に指導してくれる人間は少ないので自力で仕事の全体像を把握していくしかない場合が多いわけですが)
この話をポツポツとツイッターでしたら
みじん切りだ包丁してください、ポテトを丸く握ってください、揚げてください。って言われるより
— ピンフスキー (@hideyosino) 2017年2月14日
コロッケを作ります。そのうち具の玉ねぎを切って、ジャガイモを成型して、ラストの揚げ作業を受け持ってください。の方が理解早いということか。
このような例えが提示され、大変優秀だと思いましたのでそのまま転載させてもらいます。
そういうことなんですよ。「コロッケを作る」という目的が最初に提示されていないと、仕事はそれぞれ独立した連関のないタスクとしてベタ覚えするしかないわけじゃないですか。そこには単純な暗記だけが要求され、仕事全体の流れというものは存在しない。「言われた通りやる」しか余地がないわけです。
もちろん、「余計なことはやらせず仕事の意味も理解させず手をひたすら動かすことを要求する」みたいなものが必要になる業務のシーンもあり得ると思うんですが、僕はこれは物を覚える場合の効率としても、あるいは仕事の指導の方針としてもあまり優秀ではないと考えています。まず全体像を提示する。その上で、仕事の細かいやり方を教える。そうすれば現場から「この工程要らないのでは」とか「このやり方の方が良いのでは」みたいな声も上がりやすくなりますしね。
つまるところ、目的は「うまいコロッケを作る」ことなわけですよ。みじん切りの達人になることでもパン粉つけの名人になることでもない。まずは、「うまいコロッケを作る」という目的について理解してもらって、衣がカリっとしてじゃがいもはあくまでもほくほくと崩れベタつかないコロッケを目指すという話をしないとまずいと思うんですよ。
コロッケなら「この味を作れ」と食わせてみることも出来ると思いますが、このブログの場合目指すところをまず言語化しなければならないわけです。
一問一答をどれだけ積み上げてもゴールには辿り着かない
このブログの題材は所謂「空気が読めない」などの特性を強く持つ人間が、いかに人間の群れの中で上手くやっていくかという話です。もちろん「こういうシーンではこういう行動を取れ」という具体的なノウハウも語られることは多いですが、それはそれとして、皆さんの人生の現場というのは一人々々全く違うわけですね。それぞれの皆さんが、自分の置かれた状況に合わせて行動を作り上げていく必要があるわけです。
すごく悪い例えですが、いうなれば「人間の行動パターンをエミュレートしたロボットがロボットであることがバレないように振舞う」みたいなアプローチです。Aのパターンが入力された場合はBを出力する、Cのパターンが入力された場合はDを出力する、の積み上げでは確実にゴールまで辿り着けません。(とはいえ、頻出するものに関してはパターン暗記も有益ではあるんですが。「お礼」とか「挨拶」とかね)
そういうわけで、大筋の目的を設定してそこに至る細かい道のりに関しては各自がやり方を工夫していくというアプローチが絶対に必要になります。
「Aのパターンが入力された場合はBを出力する」という具体的なアプローチのみを積み上げていく手法は、情報量が少ないため摂取しやすく、また実行もしやすいと思います。腹括ってそれだけやってりゃウケるのかな?と思うところも無くはないのですが、僕はこの手のノウハウ本を割りと読んで失敗してきましたし、また仕事を教えられる時のスタイルとしても非常に好まないんですね。ダメだと思います。応用が効かない情報に価値など無い。
極論を言いますと、僕がAの時はB!Cの時はD!みたいな情報をここにベタ書きして、皆さんに丸暗記して実行しろと要求した場合ですが、皆さんそれ実行出来ますか?それが出来るなら発達障害者、少なくともADHDではないと思いますよ。全体像の見えない仕事をそれぞれが独立した無関係なタスクとして大量に記憶して実行出来る能力があるなら、それを生かしていく方針がいいと思います。具体的には事務処理中心の役人とか金融系のバックオフィスとかすごく向くと思います。すごい能力です。
「これさえやれば全部上手くいく」という情報は、わりと世の中に溢れています。あれは、喉越しのいい毒薬です。実際問題として、どんな時にも適応できる具体的な行動なんて存在しません。原理原則、そして目的を理解して、そこから逆算した具体的な行動を適時選択するしか究極的には無いと思います。
トライアンドエラーは必要です。やっていってください。このアプローチはダメか、じゃあこっちはどうだ?これはどうだ?よし決まった。こういったものの繰り返しが行動の精度を高めていきます。
僕も、まぁ出来ることなら「これさえやれば上手くいく、簡単だぜ!」と叫んで本を売りまくってメイクマネーして札束の風呂に浸かりたいのですが、あまり不誠実なことを書くとインターネットタコ殴りが発生することを十分心得ていますので、やっぱりそういう方針は避けたいんですよね。よろしくどうぞ。
とはいえ、具体的な話が役に立たないわけじゃない
「いや待て、断片的な仕事を覚えることを積み上げて然る後に全体像を理解するというアプローチも必ずしも間違いではないのでは?」と思われた方については、その通りです。「断片だけを記憶して、総体性を理解しないまま馬鹿の一つ覚えのように実行する」のがダメであって、詰みあがった断片が相互に結合し結果として総体を成していくなら、これは単なる逆のアプローチであってぜんぜんダメではありません。
僕は全体像をざっくりと見渡し、究極的な目的を抑えてから細部を構築していく思考メソッドを好みますが(断片だけでは記憶できないから)、逆が得意という人もいるはずです。まぁ、これが得意な人は仕事を教わるのも得意だと思うのでこのブログ読んでないと思うんですが…。(断片的な意味のわからない仕事もモリモリ習得できて、その中から総体性を見出していくのが得意なら何も困ることないだろ…)
まぁ、それはそれとしてそういうアプローチにも価値はあります。そういうわけで、前回のエントリを具体的な行動に落とし込んだものを羅列していこうと思います。全部完璧に実行するのは間違いなく不可能だと思いますが、やって、あるいはやろうとする姿勢を見せて損はないことばかりです。やりましょう。
よっしゃ行くぞ。
飲み会
- 一番先に店に入ってドアを開けろ、全員を迎え入れろ。
- 全員が入ったらスーッと後ろに回って、みんなを座らせて自分は一番下座を確保しろ。小上がりなら全員の靴を揃えろ。
- 料理が来たら取り分けろ。中々スムーズにやれないと思うがこれは慣れだ。まず一番偉い上席、それから職場で腕力がある順だ。
- 全員のグラスの残量に目を光らせろ。少なくなったら注げ。「注がなくていい」と言われるまではやれ。自分のグラスに注がれる時は両手で持って頭をペコっと下げろ。ありがとうございます、と元気に言え。
- うまそうに食え。うまそうに飲め。グラスに注がれたときは喉を鳴らして飲め。量は飲まなくていい。「あなたに注がれて嬉しい」という気持ちを表現しろ。
- 飲み会が始まる前に「今日皆の前で誰かを褒められるネタ」を3つは用意しておけ。「~さんの~には本当に助けられました!」みたいなネタをほどよく盛り上がってきたところで放て。その場にいない人間でもいい。絶対に得をする。
- 話すネタは「誰かを賞賛する」「誰かに感謝する」の二つだけでいい。逆に言えば、常日頃ネタはストックしておけ。「~さんに教わったラーメン屋めっちゃうまかったんですよ!」レベルでいい。(ただし、賞賛した結果場が冷める人間というのもいる。これは日頃から人間関係をよく観察しろ)
- 自分のちょっとした失敗の謝罪や「そのうちお礼をしなければ」という話はなるべく飲み会の席でしろ。誰かに助けられた話などは、小声で、相手に近づいてしかし周りの人間に聞こえるようにしろ。カクテルパーティー効果は強い。
- 話を振られた時はなるべく簡潔に答えろ。面白い話をしようとするな。
- 笑え。1ミリでも面白いと感じたり、あるいは「この人面白いこと言いたいんだろうな」と感じたら笑え。笑顔を上手く作れなかったときは、額をペチャンと叩いて(目を隠して)笑い声を出しながらのけぞれ。目は中々笑えない。しかし、口と身体はいつでも笑える。
- 飲み会が退屈するのは目が行き届いてないからだ。完璧に飲み会を乗り切ろうとしたら退屈する暇などない。
- 煙草は吸うな。しかし、あなたが喫煙者で仲良くなりたい対象が煙草を吸いに抜け出した時はすぐに追え。煙草を一緒に吸うほど簡単な距離の縮め方は無い。「ご一緒させていただいていいですか?」は大抵の喫煙者にとって嬉しい。
- 飲み会が終わる時はとにかく「楽しかったです」だ。楽しかったと言うほどにはアガらなかったなら「ありがとうございました」を連呼しろ。
- 他人にはどんどん飲ませろ。自分はなるべく飲むな。飲んだフリをしていろ。相手が酔えば酔うほど楽になる。ただし、相手のペースに合わせることは忘れるな。
- イジられる、笑いものにされるなどが発生した場合は笑えるところまでは笑え。ダメなら、「カンベンしてください!」と頭を下げろ。キレるな。
- 喋るな。喋らせろ。
- 翌日の挨拶回りを忘れるな。「昨日はありがとうございました」だ。上席だけじゃない。参加者全員だ。一般職のババアだけ忘れた、などの事態は死を招くぞ。
「会話で敬意や好意を主張する」というのは上級スキルです。中々出来ません。しかし、行動をルーチン化して示すというのは割とやりやすいです。それを重視してください。余計なことは可能な限り喋らず、最低でも「あいつは礼儀正しいし頑張ってる」という姿勢を見せることをゴールに設定してください。
日常会話
- 大きな声で挨拶しろ。「おはようございます!今日もよろしくお願いします!」だ。明らかに無視されたり鬱陶しい顔をされてもやれ。あれは試されていると思え。
- 相手が雑談を僅かでも振ってきたら全力で食らい付け。必死に聞け。上手く話せなくていい。「あなたと仲良く話したいんです」という気持ちを伝えろ。
- ちょっとしたことでもすぐにお礼を言え。「挨拶」と「お礼」はどんな時でも使える最高の話題だ。礼を言われて嬉しくない人間などいない。人間は他人にしてやったことはいくらでも思い出せる生物だ。礼を言われ足りている人間などいない。
- 相手の個人情報を可能な限り収集しろ。しかし質問攻めはだめだ。「先輩、休日とか何をされてるんですか?」「昼ご飯、どこに行ってます?」などの日常的な話題から徐々に徐々に掘り下げろ。
- 共通の話題を探れ。ただし、「無い」ということもよくある。期待し過ぎるな。
- 相手の話題に擦り寄っていく努力もしろ。大したコストをかけずに出来る「娯楽」「食事」などについてはやる価値がある。
- 褒めろ。「あれすごいですね、真似させていただいてます」などを言うタイミングを探せ。逆に言えば、常日頃人間を褒められる箇所を見つける努力をしろ。
- 服、鞄、事務小物などその人が「こだわっているっぽいな…」という箇所を探してみろ。ロゴさえ覚えておけばグーグルが答えを教えてくれる。高級ブランドだということがわかったらすぐに「それいいですね!」だ。
- 人間を観察しろ。事前情報なしで人間といくらでも喋れる天才などそうはいない。人間は情報を撒き散らしている。拾いに行け。
- 人間は好意に対して好意で返したくなる習性を基本的には持っている。まずは好意を向けていると認識されろ。然るべくして好意を向けられろ。話を盛り上げるのはそれからだ。
- いきなり人間同士の話が盛り上がったりするのはかなり稀だ。段階を飛び越えようとするな。まずは、「語るに足る相手」と認識されることに全力を注げ。
- 「挨拶」と「お礼」をとにかく欠かすな。「こういう時には挨拶とお礼」の考え方じゃない。「挨拶するタイミングとお礼をするタイミングを常に探す」くらいの気持ちでいい。
- 距離を縮めたい人が仕事で必要になるアイテム、忘れがちな道具などについては携帯する努力をしろ。「これですよね!どうぞ!」はポイントが高い。「これじゃねえよ」になってもいい。やらないよりはよっぽどいい。やろうとする姿勢が人間の心を解きほぐす。
基本的に、「上手に喋る」は高等スキルです。あまりやろうとしない方がいいです。まずは、「お礼」と「挨拶」で好意と礼儀をアピールし、その過程で個人情報を収集しながら接近していってください。話すのが苦手な人ほど「話す」という行為の効果を大きく見積もり過ぎる悪癖があります。普段の行動の積み上げの一番てっぺんにチョコンと乗っかっているのが「喋る」という行為です。まずはそっちを積み上げましょう。確かに、上手に上司や先輩とトークを盛り上げている同期を見ると「喋れる奴はいいよな…」と感じると思いますが、多分そいつは「仲良く喋る」ために普段から積み上げを重ねています。たまに喋り一発で全てを切り抜けていく人間も存在しなくはないですが、それはお喋りスキル特化のモンスターです。真似は出来ません。
これはこれでキツかったのでは?
細かい情報をダーっと並べてみましたが、多分半分くらい読んで読み飛ばしてここを読んでる人が6割くらいじゃないかなーと思います。どれも「やって損はない」情報なんですけどね。一つ一つはわかりやすいし飲み込みやすいんですけど、いっぱい並べると総体性が中々見えにくいという欠点が出てきます。
とはいえ、これらはやった方がいいです。実行してみると大分世界が変わってくる、それも結構大きい変化が見込めると思います。この辺を意識したことが無い人ほど、大きな効果が見込めると思います。
今後は具体的なこういった情報と抽象的な総論を色々語ってみて、読み手にとって最も理解しやすい形を探る努力をしていきたいと思います。僕も手探りですので、中々読みにくい、理解しにくい、腹落ちしにくいというところもあると思いますが、なんとか頑張りに免じてご容赦いただければと思います。
やっていきましょう。